船首とは船のどの部分?船首像の意味は?船の歴史や文化が感じられる話

船首とは船のどの部分?船首像の意味は?船の歴史や文化が感じられる話


船は人類の歩んできた歴史と共にあると言っていいほど、歴史の長い乗り物です。

その中でも船首は船の勇敢さを物語る素敵な顔。

壮大な船首だったり、丸みを帯びた優しい船首だったり…。

しかし、みなさんはどの部分を「船首」と呼ぶのか、ご存知でしょうか。

そして「船首像」が意味するものとは?

よく見る船に思わぬ歴史や文化を垣間見る、そんな「船首」についてご紹介しましょう。

船首とは船のどの部分?読み方や英語での言い方を解説

出典:Twitter

船首とは船の前端部のこと。帆船などでは船首像が付いていることも多いので、よりわかりやすいと思います。

船首は船の外観の美しさを決める重要なパーツである一方で、波をしのぐなどの機能も持っています。

「船首」の読み方は「せんしゅ」「みよし」など

「船首」と書き「せんしゅ」と読むのは分かり易い読み方ですが、実は「みよし」「みおし」とも読めるもの。

「みおし」の読み方が元となり、転じて「みよし」とも読まれるようになりました。

「みよし」は「船首」以外に「舳」とも書き、こちらは「へさき」とも読みます。

「船首」と「舳先(へさき)」は何が違う?

先にご紹介した「舳(へさき)」ですが、こちらは「舳先」とも書きます。

「舳」自体は「へさき」「みよし」「ジク」と読み、全て「船首」と同じ意味を持ちます。

ちなみに対義語は「艫(とも)」で「船尾」を表します。

実はこの「艫」という漢字は全く逆の意味も持ち併せており、「ろ」と読む場合は「船尾」のほかに「へさき」「船首」も表す言葉となります。

同時に真逆の意味を持つ漢字とは、珍しいですね。

「船首」は英語で何と言う?単語の読み方は?

英語で「船首」は「bow」。「バウ」と発音します。

「bow」には「お辞儀をする」という意味もあり、その場合「ボウ」と発音します。

また、日本国内では一般的なボート用語として、船首部分を「バウ」と呼んでいます。

比較的大きなボートから、手こぎの小さなボートまで、共通して「バウ」という言葉が使われています。

船首像にはどんな意味がある?女神や女性が多い理由は?

出典:Twitter

海賊映画などを思い出してみてください。船首に女神のような像が飾られているのを見たことはありませんか?

船首に取り付けられている像は、「船首像」と呼ばれています。

なぜ船首像が飾られるようになったのか

「船首像」が飾られるようになった理由としては、2つの説があります。

一つは、海の神を喜ばせるため。

大海原では嵐も頻繁に遭遇するもの。安全な航行を願い、海の神が喜ぶような像を船に積まなければならないと考えられていたため、船首像を飾るようになったと言われています。

もう一つは、「目」の役割。

目がないと安全に航行できないと考え、船首像を飾るようになったとか。

ヨーロッパのみならず、古代エジプトや東洋でも同じ趣旨のものが散見され、船首に大きな目が描かれたり、船首の上部に鳥の像などを飾っていたりしたそうです。

参照:船首像|コトバンク

現代のような船首像が飾られ始めたのは16世紀初頭

16世紀はじめ頃になると、船の名前にちなんだ像を飾るようになりました。

船首像には女神像や英雄の像などがありますが、これは船の名前にちなんだ像を飾る習慣がフランスあたりから始まったためとされています。

また、船の名前には女性の名前が多いもの。

これには諸説ありますが、船体のペンキ塗り直しを女性の化粧に見立てたり、祝いごとで船に装飾を施す様子を女性のドレスアップに見立てたりしたためと言われています。

他にも神話上の動物がモチーフになっていることもありますが、1869年造船のクリッパーには、魔女が飾られていたそうです。

これも船名にちなんだためですが、心穏やかでなくなってしまいそうな気がするのは、筆者だけでしょうか…。

出典:海の不思議箱|日本船舶海洋工学会

船首を左に向けたいときは?面舵と取舵について

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みなさんは「面舵いっぱい」などのセリフを耳にしたこともあるのではないでしょうか。

この「面舵」というのが、船首を右へ向け船体を右方向へ向けて進ませる際の表現で、日本特有の表現です。

この表現の由来は十二支にあり、もともと卯の方向(3時方向)へ舵を切ることを「卯の舵(うのかじ)」といい、それが徐々に変化して「おもかじ」となったそうです。

舵を切るために操作するハンドルを「舵輪」といい、この舵輪と船尾の舵が連動して動くため、舵輪を右へ回すと舵も右へ動き、船首も右へ向きます。

船首を左へ向けるときは舵輪を左へ回す「取舵(とりかじ)」となります。

これは酉の方向(9時方向)へ舵を切る「酉の舵」が変化して「取舵」になったと考えられています。

ちなみに海外の表現では、面舵のときは「スターボード」、取舵のときは「ポート」と言います。

出典:海の不思議箱|日本船舶海洋工学会

球状船首(バルバスバウ)とは?船首波との関係も解説

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船首のうち、海水面より下に球状の突起を持つタイプを「球状船首」「バルバスバウ」と言います。

戦艦大和(やまと)の船首下部にある、丸みを帯びた突起を思い出していただけると、イメージしやすいと思います。

球状船首は1911年にアメリカで発明されたもので、「造波抵抗」(船首が作る波によって生まれる抵抗)を打ち消す効果があります。

船首が海面を航行する際、波が生まれることで抵抗が発生します。

このとき、海面下の球状船首によってもうひとつの波が発生し、2つの波が上下互い違いになることで、波を打ち消し合う仕組みです。

球状船首を使うと、造波抵抗をぐんと減少させられるので、燃費が抑えられ、航行距離を長くすることができます。

ただし、全ての船で球状船首が活躍するというわけでもありません。

球状船首の利点を生かすには、大前提として球状船首が海面より下に位置している必要があります。

荷物の量が軽くなると、球状船首が海面より上に出てしまうことがあり、その場合は抵抗がむしろ大きくなってしまいます。

つまり、球状船首は荷物の重量の変化が大きい船などには適していないのです。

参照:バルバスバウ(球状船首)について|明和海運

まとめ:船首に関する話から船の歴史や文化が見える!

出典:Twitter

船首に飾られた像や船首の形状から、さまざまな歩みと歴史を垣間見ることができます。

船首像の話でご紹介した通り、船の歴史は古代ローマにまで遡ります。

そこから現代までの長い道のりの中で、船の安全を祈るための船首像や、より長い距離を航行するための知恵などが生み出されました。

今日も様々な形状の船を見ることができますが、そのひとつひとつに注目すると、船の持つ意味や機能などを知ることができます。

この記事を読んでから改めて船を見てみると、面白い発見があるかもしれません。