漁業権とは?釣りに役立つ地図「漁場マップ」や免許の取得方法も紹介
2022/2/22 1:18:16釣り
堤防でせっかく釣れた大きなタコを、すぐに逃がしている人がいました。
海には「漁業権」があり、どんな魚でも勝手に持ち帰って良いわけではなかったのです。
この記事では釣りを楽しむうえで知っておくべき「漁業権」のシステムや種類を解説し、漁場マップや漁業権の取得方法もご紹介します。ぜひ参考にしてください。
漁業権とは?共同漁業権・区画漁業権・定置漁業権の違いも解説
出典:写真AC
「漁業権」とは海の特定の区画で漁を行う権利の事。
主に漁師さんの権利や水産資源の保護のために定められた権利です。
漁業権の設定された区画で対象となる海藻や魚介類を捕獲したり、養殖や定置漁を行うと漁業権の侵害となることがあります。
漁業権の種類は3つ
- 共同漁業権:ノリ・アワビ・ウニ・エビなどの漁業を営む権利
- 区画漁業権:養殖業を営む権利
- 定置漁業権:大型定置等を営む権利
共同漁業権とは?対象はノリ・アワビ・ウニ・エビなど
「共同漁業権」は地元漁師さんたちが漁場を共同で利用できる権利です。
たとえば神奈川県の沿岸では一部を除きタコは共同漁業権の対象で、一般の釣り人が持ち帰るのは禁止です。
なおアワビ・ナマコ・シラスウナギは「特定水産動植物」に指定されており、無許可で採捕すると『3年以下の懲役又は3000万円以下の罰金』と漁業法で厳しく規制されています。
共同漁業権の対象となる主な魚介類
- ノリ
- アワビ
- ナマコ
- ウニ
- イセエビ
- その他(主に定着性の水産動植物)
区画漁業権とは?対象は養殖のノリ・昆布・牡蠣・真鯛など
「区画漁業権」は一定の区域において養殖業を営む権利のことです。
無許可で海藻や魚介類の養殖をできないのはもちろん、養殖施設を荒らす行為も区画漁業権の侵害になります。
ちょっとした堤防でも小さな生け簀があることがありますので、特に投げ釣りをする際には仕掛けを生簀に絡めたり傷つけないように気をつけましょう。
養殖設備の主な種類
- ひび建て養殖(ノリ)
- 藻類養殖(コンブ、ワカメ)
- 築堤式養殖(クルマエビ)
- 垂下式養殖(ホタテガイ、カキ)
- 小割式養殖(クロマグロ、マダイ、ブリ)
定置漁業権とは?網などの漁具に近づかないよう注意
定置漁業権は大型定置等を営む権利です(27m以下のものは「共同漁業権」に位置づけ)。
沖合にたくさんのブイが連なる光景に見覚えはありませんか。あの下には文字通り魚を一網打尽にするための大きな網が張り巡らされています。
そんな施設を破損する行為はもちろん定置漁業権の侵害ですが、何より定置網周辺では命に関わる事故を引き起こす危険があります。決して近づいてはいけません。
定置漁業権が設定されている区域での主な注意事項
- 設置された漁具施設には近づかない
- 漁具への係船は絶対に行わない
漁業権はおかしい?既得権益?よくある誤解を解説
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漁業権とは「一定の水面において特定の漁業を一定の期間排他的に営む権利」と規定されています。
「排他的」なんて書かれると一部の人だけの既得権益では?と思われるかもしれませんが、そんなことはありません。
漁師さんの仕事を妨げない、商売道具を傷つけてはいけないなど、ごく常識的なルールさえ守れば、その場所で釣りをすることに問題はありません。
この魚は持ち帰っちゃダメ、その道具は使っちゃダメ、など漁業権の種類と対象を正しく知ることが、釣りを楽しむうえで何よりも大切です。
漁業権がない場所はある?釣りの前に確認したい地図「漁場マップ」を紹介
海上保安庁が公開している「海洋状況表示システム(海しる)」というWebサイトで、「漁業権区画」のページを見ると、漁業権の免許の状況を知ることができます。
これを見ると日本のほとんどの沿岸に何らかの漁業権が定められていることがわかりますが、漁業権の定められていない場所もあるようです。
行きたい釣り場にどんな漁業権が設定されているのかがピンポイントでわかりますので、ぜひブックマークして釣行の際には「漁場マップ」としてご活用ください。
海しる(海洋状況表示システム)
漁業権免許は個人でも取れる?取得方法を紹介
出典:写真AC
漁業権の種類 | 個人での取得 |
---|---|
共同漁業権 | × |
区画漁業権 | ○ |
定置漁業権 | △ |
実は「漁業権」には、漁師さんだけでなく個人でも取得できるものがあります。
ここでは3つの漁業権と、その取得方法について簡単に説明していきたいと思います。
共同漁業権は漁業協同組合しか取得できない
まず「共同漁業権」ですが、こちらは漁業協同組合にのみ与えられる免許なので、個人で取得することはできません。
共同漁業権は、そもそも「地元漁民が共同で利用して漁業を営む権利」と規定されているものです。
区画漁業権は地元での漁業経験が重視される
養殖を行う権利「区画漁業権」については、個人でも取得可能です。
たとえば真珠の養殖業を行うなら「区画漁業権」が、小規模な生簀でコンブやワカメを養殖したいなら「特定区画漁業権」が必要になります。
ただし、実際の取得にあたっては地元での経験が重視されたり、地元漁業組合が優先されたりするので、一般の人が気軽に取得できるというものではなさそうです。
定置漁業権は地元漁民の法人に優先して与えられる
「定置漁業権」の取得に関しては個人で取得できないという決まりはないのですが、地元の漁業者の大多数が構成員となっている法人が取得優先順位第一位とされています。
そもそも定置網漁には相当の資本と従業員が必要になりますから、企業ならともかく釣り人が個人で取得するということはあまり考えられません。
まとめ:漁業権について正しい知識を持つことが大切!
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以上、「漁業権」についてご紹介してきました。
もしも農家の畑を荒らせば犯罪ですよね。それは海も同じこと。
「漁業権」は漁師さんの「畑」である漁場と日本の海洋資源を守るため、都道府県から与えられる正当な法的権利です。
沿岸漁業の秩序が保たれ、乱獲が防がれ、私たちが安心して釣りを楽しめるのもこうしたルールがあってこそ。
海のルールとマナーを守ることは釣り人にとって何よりも大切です。
遊漁のルールとマナーについては、下記のページでとてもわかりやすくまとめられていますので、ぜひご確認ください。