【仕事大公開】新人漁師の仕事は、超刺激的でカッコイイ!

【仕事大公開】新人漁師の仕事は、超刺激的でカッコイイ!


脱サラリーマン!41才で決断、漁師になる!

新人漁師の仕事_文中画像1

撮影:中丸潤

15年間自動車製品開発に携わってきた商社マンが、41歳の時に一大決心。

しらす漁で有名な鎌倉市腰越で漁師になりました(自分でも驚きです)。

その年になったら漁師になろう、しらす漁が盛んな腰越で漁業に携わりたい、なんて理由があったわけではありません。

ただ、漁師への憧れ、一次産業を盛り上げたい、実家が魚屋だったということもあり、魚関係に進むのが必然的だったと思えるようなスピードでやりたいってスイッチが入ってしまいました。

あとはそこに向かって突き進んでいった結果、41歳の新人漁師が爆誕したということです。

はじめまして、元商社マンで今は漁師の中丸潤です。

現在42歳ですが、鎌倉では腰越王子の愛称で親しまれています(イギリスには73歳の王子がいるのでまだまだ若輩者)。

漁をしながらUMILAB連載企画も頑張っていきますので、応援する気持ちで読んでもらえるとありがたいです。

新人漁師の仕事は山盛り!常識と方法は状況で変わる。

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撮影:中丸潤

さて、UMILABでの一本目の連載ということで、まずは漁師の仕事について書いていこうと思います。

私が漁師としてのキャリアをスタートしたのは鎌倉市腰越にある腰越漁港でしらす漁をはじめ、刺し網漁・タコ籠・一本釣り・海藻漁などを行い、加工・販売している勘浜(かんはま)水産です。

腰越小学校、腰越中学校出身で学生時代からのスーパースターだった先輩のもとで、漁師になるための修行をつんでいます(先輩の言うことは絶対)。

漁師の一日、スケジュールはざっくりとこんな感じです(あくまで一例で、季節・状況により変動します)。

  1. 船に乗る
  2. しらすを獲る
  3. 港に戻る(再度1に戻ることも)
  4. 生しらすを作る
  5. しらすを茹でる(釜揚げしらす)
  6. パック詰めする
  7. 片づける

超シンプルに書きましたが、魚、天気、温度、湿度、海、風、潮などの自然環境や状況により、まったく平準作業ができないということが、一年やってみてようやく分かってきたことです。

この他に畳いわしを付ける(四角い枠に均等に薄く拡げ、天日干しする)ことがあります。

自動車製品の開発をしていると誰が作業しても同じ品質のモノ作り、そして工程を作りがちです。作業基準や検査基準があって、この作業をするのに何秒で行うっていうくらい緻密なモノ作り、工程作りをしてました。

私の場合、自分自身がそこにいる価値というのを見出しクライアントに提供したかったので、売り買いだけをすることはしていませんでした。

企画から営業、設計、生産準備、量産、品質管理、物流まで一連したサプライチェーンを構築してきました(割となんでも首を突っ込むタイプ)。

ですが、そんなことはここでは全く通用しません。同じしらすを作っていても、昨日と同じ作業時間、作業工程、作業方法が今日も同じだとはまったく限らないということなんです。

変動要素が多すぎて定常的な業務ができない、つまり勘(シンプルに習得が一番大変)がすべてな完全な現場主義なわけです。

臨機応変にやり方を変え、その場の空気感を読み取る必要があります。

はじめ商社マン時代のクセでなんとなく基準を作ろうという思考が先行してしまいました。

ですが、同じことをやっても必ずしも同じ結果に結びつかないことから、今では直感に任せ、あとはえいやー精神!(これができるには経験と勘に勝ものはなく、ここでは意外とそれが正解だったりする。)

驚きの連続。一次産業~六次産業まで。漁師の仕事は多岐に渡る。

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撮影:中丸潤

さて、そんなしらす漁ですが、もう少し詳しく時間軸にそって一日の仕事を見ていきましょう。

夏は日の出が早いので、4:30頃に出漁し、9:30頃には港に戻ります(起床時間は朝3時、商社マン時代は寝る時間でした)。

10:00にはしらすの直売所(勘浜水産しらす直売所)に生しらすが並びます。

生しらすは漁にいかない陸の従業員が作ることもあります。その間に、漁師さんは釜揚げしらすの準備をしたり、場合によってはもう一度漁にでることがあります。また別の漁(タコ、サザエ、伊勢エビなど)にでることもあります。

え?!新人は、二回目の漁の船には乗らせてもらえない・・・

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撮影:中丸潤

この時、新人漁師はしらすの二回目の漁には帯同せず、陸で釜揚げしらすをひたすら加工することがあります(乾燥させます)。

二回目の漁に帯同できないとき、船を降ろされてしまうのですが、再び出漁する船を見送る瞬間が私は一番切ないです(涙目)。

漁師として役に立ちたいと思っている中で、船から降りて他の漁師さんが海で頑張って、しらすを獲っている姿を想像するとジェラシーを感じちゃうのです(気にしすぎ、いや陸の作業も大事な仕事)。

というのも、自分が乗っているときよりも、降りた後の漁のほうがしらすが獲れてたりすると、心のなかではすごい葛藤があるわけですよ。

しらすがたくさん獲れるのは嬉しい。だけど、自分がいない時に獲れるっていうのはちょっと複雑。(あれ、俺がいないほうが獲れるってどういうこと?)

やっぱり獲れている時の船に乗りたいし、その時に漁師として仕事で役に立ちたいって思うわけです。

しらすが獲れるタイミングには全部立ち会いたい(できることならば)。

あと単純に獲れるってことは”モッテル”ってことでもあるからかな。(結局そこ!)

二回目の漁から帰ってきたら、また釜揚げしらすを作ります(兎に角無心で茹でては乾燥の無限ループ)。

パック詰めまで終わったら大体午後4時頃になることも(よーやく一息)。

皆さんお気づきかもしれませんが、漁師さんって漁をするだけが仕事じゃないんですね。

漁はもちろん、釜揚げしらすを作ったり、畳いわしを作ったり、沖漬けを作ったり、ソウダガツオやウルメイワシが水揚げされれば三枚におろしたりもします。

特に湘南しらすと呼ばれるプライドフィッシュを提供している漁師さんはほとんどがこのスキームです。

6次産業という言葉が世の中に出回り始めたずっと前からやっているそうです。

漁師は、スーパーマルチタスク!

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撮影:中丸潤

そうです、漁師さんはスーパーマルチタスカ―(スーパーマルチタスクな人)なのです。

そして時間との勝負なので休憩という休憩はありません(息つく暇がないほどみんながんばってる!)。

お昼は早い・安い・旨いで有名な牛丼チェーンで流し込むように食べます。

それでも毎日太陽に当たり、風を感じて、海水に触れ、日が出ている間に仕事を頑張って、日が暮れたら力水という名のお酒を食らって午後9時には就寝。健康的でしかないです、お陰でお肌もツルツル。

生きてるわぁ~はぁ~(はぁ~幸せ~のはぁ~)って実感しながら、日々過ごしています。

商社マン時代は9時に出社し、午後6時には一直目が終了。6時からは2直目の夜間ミーティングがスタート。飲んで、歌って、踊って午前3時に就寝。

それはそれで楽しい人生でした(今でもたま~にありますがめちゃ楽しい、つまりお酒が大好き)。

そこから考えると180°生活が変わった!と言うことですね、改めて文字に起こすと凄い変わりようなわけです(他人事)。

日ごろの準備の積み重ねと、状況判断力が求められる

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撮影:中丸潤

さて、漁師さんの仕事に戻りましょう。

力仕事のイメージが強い漁師さんですが、船の上ではロープワークは必須スキルです。

漁師さんと言えばロープワークが上手いとかイメージもあると思うのですが、上手いだけではなくて、その時その時の海の中の状況により、結ぶ場所や結ぶ長さも変えて、更にそれを素早く対応し、次の漁に間に合わせます(状況判断力がはんぱねーわけです)。

それが出来ないと怒られ・・・(涙目)
目の前の獲物を一秒でも早く獲りたい、日本人の狩猟本能が目覚める瞬間です。

それ急げ~で網打ち(網をかけること)に入るため、船がすごい勢いで旋回します。

この瞬間は立っているだけで精一杯なほど横Gがかかり、船体が斜めになることで、漏れなく体幹が鍛えられます!

ロープワークに留まらず、作業全般で兎に角【素早く】【正確に】!が求められます。

これが漁師の仕事です、あと網が破れたらその場で直すこともしますので器用でないとできません(そこまでやるのか!すげーな漁師さん)。

毎日、海に出るからわかる。高揚感は何にも代えがたい!

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撮影:中丸潤

漁師の仕事の面白さは、一言でいうとしらすが網に入った時に高揚感を味わうことができることです。これは日本人の狩猟本能なのか、網を引き上げる瞬間はなんとも言えない気持ちの高ぶりがあります(よっしゃー!)

網に入っているしらすの量が多ければ多いほど、その気持ちは高ぶるためその反動で少ないと凹みます(トホホ)。

というのも、海の上ではしらす専用の魚群探知機を舵取りがじーっと睨めっこしあい、いざ網投入!そこから10分程度は網を引っ張り、最終的に引き上げた時にようやくしらすと出会うことができます。

待つ時間が意外と長いのもしらす漁の特徴。

しらすが多ければ多いほど待ち望んだしらすちゃんとのご対面となるわけで、感動も一塩。ですが、少ないと待ちわびた分だけ悲しみも深いです(恋愛と一緒)。

しらすを追いかけてくる魚は、脂がのっていてウマイ!

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撮影:中丸潤

しらす漁をしていると、しらすを追いかけている魚達にも出会えるのも魅力の一つです。腰越漁港や江ノ島周辺はとにかく魚種が豊富にいます。

例えば春はカマスやアジ、夏から秋にかけてはソウダガツオ、イナダやワラサ、冬は60cmサイズの太刀魚やスズキとも出会えます。

しらすを追いかけている魚は脂が乗っていて美味ですよ。

常連さんと言えばイカ類ですが、その他にもクロダイ、真鯛、ヒラメなんかも網にかかります(クサフグも多数)。

常連さんは良いのですが、招かざるお客様も網にかかることもしばしば。

エイ、ゴンズイ、ミノカサゴなどの毒を持っている魚が網にかかることもあります。それも巨大なエイなどが入ってしまったときは手鉤(てかぎ)と呼ばれる器具を使って、魚に触らないように海へお帰りいただきます。

先輩漁師さんはこの手鉤を使わずに、優しく素手で持ち上げ、お帰りいただくスマートさ!!!(カッコいい!)

私も一度だけミノカサゴの背びれ(猛毒注意)に触れてしまったことがありました。

すぐさま真水を使って洗い流しましたので、ちょっとしびれたくらいですみましたが、刺さってしまっていたら確実に毒が回って手がパンパンに腫れ、もの凄い痛みがしばらく続くそうです(魚はなめるのではなく、いただくもの)。

エイなんかはデッカイのが入ってしまうこともあり、どうするんだよこれ!!!って本気で思います。

両手で手鉤をもってよっこいせと海に。棘に注意しながら危険とも背中合わせの作業です。

その他にもサバフグ、コノシロ、ウルメイワシ、ハモやあんこうまでいますよ。

多様な魚達に出会えるだけではなく、早起きは三文の徳が他にもあります。

それは何と言っても昇る前の神々しい太陽の光を浴びることができることでしょう。

腰越漁港からでていくと左手に昇りかけの太陽と出会うことができます。この朝日がとても素晴らしく、毎日違った表情で、私たちに行ってらっしゃいと声を掛けてくれている気持ちになります。

思わず手を合わせたくなる瞬間です(毎日晴れなら良いのですが)。

漁師さんの仕事や魅力をご紹介させていただきましたが、イメージ通りでしたか?

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撮影:中丸潤

なろうと思っても、簡単になれないというイメージの漁師さん。

実際になってみると大変な修行ではありますが、良いこともたくさんありました。早寝早起き、太陽を浴びることで得られるエネルギー、地産地消で鮮度抜群な魚を食すことができることで、健康的、人間本来の生き方、過ごし方ができている気がしています。

いつか皆さんの食卓にも腰越で獲れた魚をお届けできるように、そして一人前の漁師になるために頑張ります。どうか応援宜しくお願いいたします。

魚に触れる機会や食育などを伝えるための【腰越王子が教えるお魚さばきワークショップ】を開催しています。興味のある方はDMください。

また腰越で獲れたしらすはどこで手に入れることができますか?などの質問や相談などがありましたらぜひご連絡ください。

プロフィール

中丸潤(なかまるじゅん)
生年月日:1979年9月30日(42歳)
出身地:鎌倉市腰越
江戸時代から腰越の地に住む6代目(愛称は腰越王子)

元商社マン、今は漁師。ラジオDJ(鎌倉FM)、ワークショップ講師、幼稚園理事、危険木の伐採屋。地域情報発信メディア運営やイベントの企画・運営、鎌倉市腰越を盛り上げる地域のファシリテーターとして活躍。

腰越で初めての呑み歩きイベント『腰越ぶらり呑み歩きの日』を企画、主催し、鎌倉が閑散期となる11月のイベントで地域を活性化。

カマコンアワード2016新人賞グランプリを受賞。

斬新なアイディアの発想、それを伝えるプレゼン力・実行力、地域住民を巻き込む力で、想いを実現させている。

明るく、いつも笑顔で、関わる人すべてを幸せにすることをライフミッションと考えている。 その場の空気を明るく、そしてポジティブなものに変換させることができる。

魚に触れる機会を増やし、食育などにも力をいれ、家族で参加できる【腰越王子が教えるお魚さばきワークショップ】を定期的に開催している。

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